2011年10月15日土曜日

綱引き



旧暦8月15日は十五夜。全国各地で古くから伝わる、名月の鑑賞行事が行われる。

種子島ではこの晩、縁側にススキ、ケイトウ、ハギを生け、ツノマキを供え、つきの中でモチをつくウサギを見ながら一年の豊作に感謝して秋の夜長を楽しんだ。

一方、各地区の大道では綱引きがあった。
十五夜が近づくと、地区民集って、握り飯を持ってカヤ引きに行った。それぞれ引いたカヤは山中の松の枝に下げられ、ヨイショヨイショと掛け声をかけ練るのである。
一日がかりで直径二十㌢程度の頑丈な綱が作られ、日没後にこの綱を担いで歌を歌いながら岐路についた。
この綱は十五夜の晩まで公民館の中に大切に保存された。

当日は、地区の中央の道路で上・下に分かれて引き合う。

絵のように、最初に口上を唱えて「十五夜お月さま まつりあげて…ヨイヤサ ヨイヤサ」と引くのである。

先輩たちがいたづらをし、綱の後を電柱やトラックなどに結びつけたりするので、引く子供たちは大変であった。

こうして一晩引くのであるが、車が多くなり、道路でのゲームが禁止され、学校の校庭へ移っていった。
そしてカヤを引くこともなくなり、次第に姿を消していった。
綱を引くことだけでなく、綱を作る過程そのものが子供たちが共同生活になじんでいくための大切な教育の場であった。

(広報にしのおもて 市政の窓 昭和58年10月号)

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